男前な彼女
俺は君を抱き締めた。
忘れないように。
俺のこと。
俺に抱き締められることで、気持ちが揺れ動くんじゃないかって、思ったんだ。
そんなことがあるはずないのに…。
そして、意地悪な質問もした。
「上牧君のこと、好きなの?」
そんなの、好きに決まってる。
聞かなくても分かることだ。
でも、高槻さんは答えず、「離せ」とだけ口にした。
高槻さんのことだ、好きなら『好き』とはっきり言うはず…
もしかして…
うまくいってないのか?
それとも、最初から高槻さんには気なんかなくて、上牧君の言われるがままになってるのか?
分からない。
分からないけど……
俺は、チャンスだと思った。
俺の中の黒い霧のようなものが、動き始めたんだ。