男前な彼女
制服のネクタイを結ぶ。
鏡の前に立ち、自分の姿を見てみた。
――うん……まぁ、こっちの方がしっくりきてるかもだけど……
あのスカートよりはね…
そんな自分を少し残念に思う。
せっかく、女の子に生まれたのに男の格好の方が似合うだなんて…。
残念以外の何者でもない。
それより、この姿……
――ちょっと、文化祭を思い出すなぁ……
上牧とあたしが付き合い始めたのは、あの日から。
そういえば、キスもあの日だった。
「つーか、手ぇ早すぎ…」
普通 告白して、しばらくして二人の関係が良いものになってからキスするものじゃないのか?
あいつの場合、順序も何もかも無いに等しかった。
告白する前にキスだなんて…ありえない。
何の了承もなく、あいつはあたしのファーストキスを奪ったんだ。
…でも、そんなやつにハマってるのは紛れもなくあたし。
文句なんて言えない。
「お、そろそろ行かなきゃな…」
あたしは更衣室のドアを開けた。