男前な彼女
そう言いながら現れたのは、黒くて長い髪の女の人。
ちょっと、ムッとした顔をしてる。
「俺は、誰にでも優しいの!」
「かわいい子にだけでしょ?」
「心外だなぁ……」
その女の人は、ふんっ、と言ってから、あたしたちのほうを向いてニコッとした。
「私、水渡 茜【ミト アカネ】。よろしくね」
――かわいい人……
はっきり言って美人さんだ。
「小林さんと水渡さんって、付き合ってるんだって」
南が小声で囁く。
――そうか、付き合ってるのか…
お似合いな二人だ。
聞いてからもう一度、二人を見ると、確かにそういう雰囲気に見える。
って……
「南さん、情報が早いんですね」
「あたしを誰だと思ってるの☆」
腰に手をあてて、威張ったポーズをしている。
様になってるから不思議だ。
オシャレな喫茶店で、楽しい先輩たちや、友達に囲まれて…
――なんか、楽しくなりそうかも、このバイト…
あたしは、これまでにない期待に胸を膨らませた。