男前な彼女
「…朝陽兄ちゃん…?」
「「お兄さん?」」
笹岡さんと水渡さんの声がぴったり重なった。
本当に少しもズレずにだ。
「あれがお兄さんなの?」
「えー。うそぉ!」
「多分変装してるつもりなんだと思います」
普段まであんな格好をしてると思われたら、たまったもんじゃない。
怪しすぎる。
「今日、お店に来るって言ってましたから……」
あんな変な格好をして、こっちを見てくるなんて朝陽兄ちゃん意外に考えられない。
「はぁ……」
笹岡さんも水渡さんも、驚いたような…呆れた顔をしている。
――なんで、普通に来なかったんだ!兄ちゃん!
多分、あたしに気付かれないように、さりげなく見に来るつもりだったんだろう。
でも、あれじゃ逆効果だ。
目立ちすぎている。
……にしても
「暇なんだなぁ…朝陽兄ちゃん……」
わざわざそんな格好をしてここまで来るなんて…