男前な彼女
「クリスマスだろ!クリスマス!」
どうやら、上牧はイベントには敏感なやつらしい。
楽しそうにはしゃいでいる。
なんだか、上牧に犬の耳としっぽが見えてきた。
「あぁ…クリスマスね……」
「どっか行くぞ!二人で!」
「いいんじゃない?別に」
というか、こいつはあたしの許可なんかなくても、あたしを連れ出しただろうけど……
「よし。じゃあ、25日に俺の家に来い。絶対だぞ?予約したからな?」
「はいはい」
そこまで話したところで、ちょうど家に着いた。
「それじゃ、また明日」
「ちょっとまてよ」
上牧はあたしを引き寄せると、ゆっくりと味わうように唇を重ねた。
「…ん……んぅ…」
上牧には珍しく、優しいキス。
すごく温かくて……寒いはずなのに、溶けそうだ。
「じゃ、またな」
あたしから唇を離した上牧は、軽く手を挙げて、あたしに背を向けた。
――ずるい。
さっきまで あたしの頭の中の約80%を占めていて寒さは、もう気にならない。
その分、上牧が持っていってしまった。
「…くそぅ……っ」
ほんと、あいつにはかなわない…。
あいつの温もりが残る唇を、そっと手で拭った。