男前な彼女




「クリスマスだろ!クリスマス!」





どうやら、上牧はイベントには敏感なやつらしい。


楽しそうにはしゃいでいる。




なんだか、上牧に犬の耳としっぽが見えてきた。






「あぁ…クリスマスね……」


「どっか行くぞ!二人で!」


「いいんじゃない?別に」





というか、こいつはあたしの許可なんかなくても、あたしを連れ出しただろうけど……






「よし。じゃあ、25日に俺の家に来い。絶対だぞ?予約したからな?」


「はいはい」






そこまで話したところで、ちょうど家に着いた。







「それじゃ、また明日」


「ちょっとまてよ」






上牧はあたしを引き寄せると、ゆっくりと味わうように唇を重ねた。






「…ん……んぅ…」




上牧には珍しく、優しいキス。



すごく温かくて……寒いはずなのに、溶けそうだ。








「じゃ、またな」





あたしから唇を離した上牧は、軽く手を挙げて、あたしに背を向けた。







――ずるい。






さっきまで あたしの頭の中の約80%を占めていて寒さは、もう気にならない。



その分、上牧が持っていってしまった。








「…くそぅ……っ」






ほんと、あいつにはかなわない…。






あいつの温もりが残る唇を、そっと手で拭った。









< 220 / 412 >

この作品をシェア

pagetop