男前な彼女
「それじゃあ、出発するぞー!」
朝陽兄ちゃんが車の運転席に乗り込み、片手をあげる。
ちなみに、朝陽兄ちゃんは車の免許を持ってる。
お父さんがいないことが多いから、出かける時はほとんど朝陽兄ちゃんが運転する。
「あのさぁ…どこに行くつもりなの?」
「山だって」
海兄ちゃんが笑顔で答える。
「……え?」
「登山するんだってさー。クリスマスに」
――や、山登り?クリスマスに?
クリスマスにそんなことをする意味が一体、どこにあるのか。
…と、そこもツッコミどころだが、もっと重要なのはそこではない。
山登りをして…
――夕方マデニハ帰ッテ来レマスカ?
買い物をするとか、近場なら問題はなかった。
だが、山登りとなると結構 時間はかかる。
これは想定外だ。
「よし、出発ー!」
テンションの高い朝陽兄ちゃんの合図で、車は走り始めた。