男前な彼女
車から出て、あたしは一歩前に出た。
「朝陽兄ちゃん!あたしっ……!」
「今日は俺が晩御飯作るからな~。楽しみにしとけよ。咲夜!」
「…え?あの…えと…」
「さぁー!頑張って作るぞー」
そう言って、朝陽兄ちゃんは家の中に入っていく。
言えなかったうえに、あの発言。
そんなこと言われたら、行けなくなる…。
――だめだな、あたし。朝陽兄ちゃんに弱いのかも…。
あたしが俯いて落ち込んでいると、肩の上に誰かの手がのった。
振り向くと海兄ちゃんがいた。
「行っておいで」
「……え?」
「約束があるんだろ?…上牧君と」
――どうして?
どうして海兄ちゃんは分かったんだろう。
もちろん、海兄ちゃんに約束のことを話した覚えもない。
「……なんで分かったの?」
「分かるよ」
海兄ちゃんは肩から手をおろす。
「お兄ちゃんだから」
あまりにも曖昧な表現にも関わらず、あたしは納得した。
多分、最近のあたしの行動を見て気付いたんだろう。
兄として、あたしの傍にいたから分かること。
多分…そういうこと。