男前な彼女
「兄さんには俺から言っておくから。早く行ってあげな。きっと、上牧君も待ってる」
「うん!」
海兄ちゃんが神様に見えた。
あたしは走り出そうとして、止まった。
そして、振り返った。
「咲夜?」
いつもお世話になっている兄ちゃんへ、感謝の気持ちを込めて。
「ありがとう、海兄ちゃん」
あたしは走り出した。
海兄ちゃんは、優しく微笑んでいた――
「クリスマスは、好きな人と過ごしたい……か」
遠くを見つめ、呟く。
「そんなものかなぁ…」
海兄ちゃんが溢したその声は、あたしには届いていなかった――