男前な彼女




「…咲夜、ちゃん?」




一人ぼっちだった世界に、誰かの声が響く。





「…え?」




我にかえったあたしは、はっとした。


そこは自分の家の前。



あたしは大和のお父さんに連れ出された後、無意識に帰ってきたらしい。





「どうしたの?家に入らないの?さっきから、ずっとそこに立ってるけど…」




声がした方に顔を向けると、そこにいたのは隼人さんだった。


こっちを向いて、キョトンとしている。





「あ、いえ……それじゃ…」





あたしは思わず隼人さんから目をそらしてしまう。



今の…


こんな姿のあたしを見せたくなくて。





「あっ、ちょっと待って!」




すると、隼人さんは何かに気付いたようにあたしを呼び止めて、こっちに向かって歩いてくる。










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