男前な彼女
「……え?」
驚きとも、焦りとも とれる表情。
海兄ちゃんにそんな顔をさせているのは、紛れもなく、あたしなんだ。
「…『隼人さん』って、もしかして、お隣の“橘君”?」
こくりと頷く。
「そんな、どうして急に…」
「フラれたんだ」
大和に、そう続けようとしたけど出来なかった。
もう一度その名を口にすると、また泣いてしまいそうで。
「フラれた…?上牧君に?」
フラれたようなものだ。
きっと、大和にはもう、あたしは必要ない。
あたしは、海兄ちゃんと視線を合わせないまま。
海兄ちゃんはため息を一つついた。
「咲夜が橘君を好きなら、俺は応援するよ。全力で」
力強い声。
その声に、その響きに、少し安心する。
「けど、それが咲夜の本音?」