ウソ★スキ
「思い出すんだよ、あのときのこと」

ソラがベッドにゆっくりと腰掛けると、

その傍らに立っているあたしと、向き合う格好になる。

あたしは何故か一歩だけ後ずさりした。


そして、動揺を隠しながら、笑って言った。

「ばっ、バカじゃないの? あんな傷なんて、すぐに消えるんだよ?」

「あんな、なんて言うなよ」

「言うよ!」


「……それに、あの傷だけじゃないから。俺が思い出すのは、美夕が震えながら、顔隠して、泣いてたことだから」


ソラは両手で頭を抱えて、さらに続けた。


「お前……俺をこんな気持ちにさせんなよ」


頭をかきむしるソラは、すごく苦しんでいて、

あたしはそんなソラから目が離せなかった。



「キラが大事なことに変わりはないんだ。それは恋とか、そんな簡単なもんじゃなくて、俺たちは相手がいないとダメになる……それは一生変わらない……」


ソラから初めて聞かされる、冗談抜きの本音。

あたしの胸がズキンと大きく痛んだ。



「……知ってるよ」


あたしがそう呟いた後、しばらくあたし達の間には沈黙が続いた。









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