ウソ★スキ



……だけど、電話の向こうからは何の声も聞こえてこない。



「ソラ? 聞こえてるの?」



うっかりボタンを押し間違えただけなのかも。

そう思って耳をすますと、受話器の向こうから、気配を押し殺すような息遣いがかすかに聞こえてきた。



間違いなんかじゃない。

確かに、電話口の向こうにはソラがいるのに。



「…………」

「ねえ、ソラ?」

「…………」

「……もしかして具合が悪いとか? キラがいるんだし、大丈夫だよね?」

「…………」



沈黙は、何分も続いた。

なんだかイヤな感じがして、あたしはベッドから起き上がると、その縁に背筋を伸ばして腰掛けた。



なんでだろう?

ものすごく、イライラする。


「ねえ、明日早いんだし、用がないんだったらもう切るよ?」


……それでもソラは無言だった。


電話を切っちゃえばいいのに。

だけどあたしは、そうすることもできなくて。



こうして、ただ、沈黙の時間だけが過ぎていった。


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