ウソ★スキ
ふと、あたしの脳裏に、あの雨の日の記憶が蘇る。
乗り過ごしたバスの中で、あたしは苑ちゃんと会った。
あの時、ソラと手をつないで座席に座っていたところを、苑ちゃんは表情ひとつ変えずに見ていた……。
そして。
あたしとソラが2人で歩いている間、キラから、何度も何度も電話がかかってきた……。
──もしかして、キラは、全部苑ちゃんから聞いてたの?
「そういえば」
先輩の声が、どこか遠くから聞こえてくる。
「キラちゃんも一緒にピアノ、習ってたんだよなぁ……」
私が黙って頷くと、先輩は、うーんって少し難しい顔をした。
「キラちゃんのことは、全然思い出せないな」
「……え?」
「不思議だな……。苑が難しい顔をしてたり、美夕ちゃんが嬉しそうな顔をしていたのは鮮明に覚えてるんだけどね……」
外でバスのエンジン音が聞こえた。
……多分、2人が乗っているバスだ。
「ピアノはそこそこ上手に弾いていた気がするんだけど……顔だけは、どうしても思い出せないんだ。キラちゃんって、どんな顔してピアノ弾いてたんだろう?」
そして、バスはゆっくりと停車した。
乗り過ごしたバスの中で、あたしは苑ちゃんと会った。
あの時、ソラと手をつないで座席に座っていたところを、苑ちゃんは表情ひとつ変えずに見ていた……。
そして。
あたしとソラが2人で歩いている間、キラから、何度も何度も電話がかかってきた……。
──もしかして、キラは、全部苑ちゃんから聞いてたの?
「そういえば」
先輩の声が、どこか遠くから聞こえてくる。
「キラちゃんも一緒にピアノ、習ってたんだよなぁ……」
私が黙って頷くと、先輩は、うーんって少し難しい顔をした。
「キラちゃんのことは、全然思い出せないな」
「……え?」
「不思議だな……。苑が難しい顔をしてたり、美夕ちゃんが嬉しそうな顔をしていたのは鮮明に覚えてるんだけどね……」
外でバスのエンジン音が聞こえた。
……多分、2人が乗っているバスだ。
「ピアノはそこそこ上手に弾いていた気がするんだけど……顔だけは、どうしても思い出せないんだ。キラちゃんって、どんな顔してピアノ弾いてたんだろう?」
そして、バスはゆっくりと停車した。