ウソ★スキ
「迎えに行こうよ」

先輩は、あたしの手をとって待合室を出ようとした。

だけど、あたしの足はビクとも動かなくて。


……どうしよう。

あたし、どんな顔してキラに会えばいいの?


それに、先輩に、まだ2人のことを話してもいないのに。


このままじゃ、2人に会えないよ……。



「美夕ちゃん?」

先輩は、強張ったあたしの顔を心配そうに覗き込むと、笑いながら頭を撫でてくれた。


「もしかして、緊張してる?」


……きっと先輩は、これからの旅行──特に、今夜のこと──を、あたしが意識してるって思ってるんだ。

今のあたしには、そこまで考える余裕なんてないのに……。


「困ったなぁ。緊張って、簡単に移るんだから」


そんなことを楽しそうに話す先輩に、

あたしは引きつった笑顔さえ、返すことができなかった。


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