ウソ★スキ
そこで、いつもなら「そんなの待ってられないから、行こうよ!」って笑って返すのがキラなのに。

だけど今は、その顔を強張らせて、ただじっとソラを見つめていた。


「……ソラ、なに怒ってるの?」

キラの声は低い。

「別に」

「ウソつき。さっきからずっと機嫌悪いじゃん」

「……」


ソラは何も答えようとしなかった。

そしてあたしと先輩は、目の前のそんな2人の様子を見守る以外なにもできなくて。




──だけど、そんな沈黙に耐えられなくなったのはあたしだった。


「キラ、あたしと行こうよ!」

そう言って立ち上がると、

「あたしも喉渇いたし、ね? 一緒に行こう?」

そう言い終える前に、あたしはキラの手をつかんで無理矢理立ち上がらせると、先輩とソラを残してその場をあとにした。


だって。

苦しくて。


2人のことを見ているだけなのに、

あれ以上あの場にいたら、キラよりも先に、


あたしが泣いてしまいそうだった。







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