ウソ★スキ
キラは、すっかり寝入っていた。

気持ちよさそうに、こっくりこっくりと舟を漕ぎながら、ソラにすっかり力の抜けた身体を預けている。


……口を半開きにしちゃって。

そんなかわいい寝顔には、小学生のころから変わらないあどけなさが残っていた。



だけど、一方のソラは違った。



窓枠にひじを突いて、じっと目をつぶっていたけれど……


あたしには、なんとなく分かるんだ。

ソラは、決して寝たりしていない。



だって、まぶたの下の眼球が、時々ピクピク動いているのが分かるんだもん。

それにソラは、キラに肩を貸したまま、どんなに電車が揺れても微動だにしなくて。

そのくせ、あたしが少しでも足を動かすと、ソラの靴の先がそれに反応してビクって跳ねる。


それはあまりにも不自然だった。



……ソラは寝たふりをしてるだけだ。



あたしはもう一度目の前のキラを見た。

耳を澄ますと、電車の振動音が途切れる合間に、キラのスースーって言う寝息が聞こえて来る。



間違いない。

キラはよく寝ている。


車両入り口の扉を見たけれど、先輩が戻ってくる気配も無かった。



──どうしても、ソラに聞きたいことがあった。



あたしは、キラが目を覚まさないように、静かにゆっくりと、窓側──ソラの目の前──へと自分の身体を移動させ始めた。




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