ウソ★スキ
「──苑が、言うんだ」
それは何気なく入ったお土産屋さん。
その店内をブラブラ歩きながら、ポツリと先輩が言った。
「さっきの苑からの電話なんだけど……。あいつ、何を言うのかと思ったら、怖い声で『美夕ちゃんのことをしっかりつかまえておけ』って」
「……え?」
「おかしいだろ? だけど苑のヤツ、いたって真面目で」
先輩は、わざとあたしの方を見ないようにしていた。
目の前の民芸品を手に取ってはすぐに元に戻す仕草は、先輩にしては珍しく落ち着きがなくて。
──嫌な予感がした。
繋がれた手が、次第に汗ばんでいく。
「──『美夕ちゃんのこと、ソラにとられちゃうよ。あの2人はお兄ちゃんに隠れて会ってるんだから』って」
そこまで言うと、先輩はフッと鼻で笑った。
「俺、ダメだね。……美夕ちゃんのこと信じてるつもりなのに、なんか焦っちゃって」