ウソ★スキ
「だったら!」

あたしは声を震わせながら、言った。


「……だったら、あの雨の日は? キラ言ってたんだよ? ……ソラが帰ってくるなり、玄関で自分を押し倒したんだって」


ソラは黙ったまま、目を閉じた。


「だからあたし、それを聞いて……からかわれたんだって思って……ソラに腹が立って……」



そうだよ……。

あたし、それで、一日中保健室で泣いて、

ソラを忘れるんだって決めたのに……。




「……キラが玄関で待ってたのは本当だよ。多分、苑ちゃんに俺たちのこと聞いてたんじゃないか? ……帰るなり泣かれて、抱けって迫られて」

「……」

「でも、無理なものは無理だったんだ。手には美夕の手の感触がまだ残ってたし……」



──あの次の日の朝、キラは確かにいつもと違ってはしゃいでいた。


人前だというのに、大胆に、ソラのことを語って……。


キラは、本当に幸せそうだったのに……。




目の前のソラの顔が、キラに見えた。

キラが、あたしをじっと見つめている──。



また目眩がして、自分の力で立っていられなくなって、


あたしは倒れるようにトイレのドアにもたれかかった。







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