ウソ★スキ
あたしが躊躇っていると、

「美夕、長旅だったし疲れてるんじゃない? 部屋でゆっくりしたら?」

そう言ったのはソラだった。

あたしは顔を上げて、部屋のドアノブに手をかけていたソラを見つめた。

「無理しなくていいんだぞ? ちょっとぐらい休みたいよな?」

あたしに笑顔を向けるソラ。



──ドキッと、した。



ソラは、自然だった。

さっき、お土産屋さんのトイレであった出来事は全部夢だったんじゃないかって思うくらい、自然で。

あまりにも、普通で──。



あたし、今から先輩と同じ部屋に入るんだよ?

それを止めるどころか、顔色一つ変えてくれないのは、ホントにあたしのこと、割り切っちゃったっていうことなの?



「ううん、大丈夫!」

そんなソラの側にいるのが苦しくて。


「……あたしは、大丈夫だから」

あたしは、ソラの目を見ずに、笑ってそう答えた。



< 314 / 667 >

この作品をシェア

pagetop