ウソ★スキ
部屋の入り口にはユニットバス。

奥に進み扉を開けると、そこは2つのベッドが並ぶ10畳ほどの部屋だった。


「荷物はここに置くよ」

先輩は手前のベッドにあたしのカバンを置くと、その横にゆっくりと腰掛けた。

そして、ベッドに両手をついて、気持ちよさそうに背中を反らした。


「疲れたね」


顎がぐっと持ち上げられた先輩の喉元に、くっきりと、喉仏が浮き上がって見える。


……そうだ。先輩って「男」なんだ。

あたしは今更ながらそんなことを実感した。



「そんなところに立ってないで、座ったら?」


先輩はそう言うと、自分の横ではなく、目の前の誰も座っていないベッドを指差した。

でも……。

確かに足はかなり疲れていたけれど、どうしても座る気持ちにはなれなくて。


「あたし、手伝いに行かないと……」


先輩にかろうじで聞こえるくらいの小声でそう呟くと、あたしは逃げるようにその場を飛び出した。



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