ウソ★スキ
「美夕ちゃん!」

部屋の扉に手をかけたところで、あたしは先輩の声に引き止められた。


「俺と話をするのもイヤなの?」

「いえ……そういうわけじゃないんですけど……」

「……難しいかもしれないけど、せめて食事のときは楽しく過ごそうよ。できるかな?」

先輩の声は、明らかに強張っていた。

穏やかに、そして冷静に。

感情を押し殺して話しかけてくれてはいるけれど、本当は先輩だって緊張しているんだ。

そんな気持ちが、先輩に向けた背中から痛いほど伝わってきて……。


「はい……」


ごめんね、先輩。

本当は頭を下げて、何度も何度もそう言いたかった。

でも、そんな言葉を口に出すのはかえって失礼な気がした。


あたしはその言葉をぐっと呑み込むと、静かに部屋をあとにした。


階下へ向かう途中、あたしはキラとソラの部屋の前で立ち止まった。

ドアと床の隙間から部屋の明かりが漏れているけれど、中からは耳を澄ましても物音ひとつ聞こえてこない。



キラを誘って、2人一緒に階下に降りた方がいいのかな?



そう思ってはみたものの、

結局あたしはドアをノックできずに、1人で階段を下りた。








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