ウソ★スキ
「ソラ、ごめんっ!」

慌てて離れようとしたあたしに、ソラは言った。

「いいよ、このまま俺につかまってて」


そんなソラの無邪気な笑顔が、とても苦しい。


あたしは、

「ありがとう」

って、震える手でソラの腕をぎゅっとつかんだ。




「……あれ、美夕、香水変えた?」

「えっ?」

「気のせいかな? 今日の美夕、いい匂いがするんだけど」


ソラはそう言うと、前屈みになってあたしのうなじに自分の鼻を近づけてきた。


「ひゃっ!」

ソラの息が首筋にかかって、あたしは思わず変な声を上げてしまう。

「なんだよ、その声」

ソラはおもしろそうに笑っていた。



「……だって、くすぐったいんだもん」



< 32 / 667 >

この作品をシェア

pagetop