ウソ★スキ
あたしたちが次に足を止めたのは、夕方旦那さんと奥さんがあたしたちを迎えてくれたペンションの玄関前だった。
目の前の石段を3つ上がれば、その先にあるのは玄関のドア。
その先に、キラと先輩が待っている──。
「美夕」
あたしが1歩石段を上ろうとしたところで、ソラはあたしの手を引っ張った。
「ちょっと待って」
あたしたちは石段の手前で、また、立ち止まった。
……風が出てきたみたいだ。
ザワザワと音を立てて周囲の木が揺れると、その音に合わせるように雲の流れも速くなる。
そして、黒い雲の間から月がその姿を表すと、辺りは白く明るくなって、目の前のソラの顔をぼんやりと照らし出した。
ソラの口元には、さっき先輩に殴られた大きなアザがあった。
「口……痛い?」
あたしが手を恐る恐る伸ばしてソラのアザに触れると、ソラはそっと目を閉じた。
ソラの頬は、唇は、とても冷たかった。
「俺は大丈夫。多分、俺より先輩の方が痛かったはずだ」
ソラはゆっくり目を開けると、あたしの手の上に自分の掌を重ねた。
目の前の石段を3つ上がれば、その先にあるのは玄関のドア。
その先に、キラと先輩が待っている──。
「美夕」
あたしが1歩石段を上ろうとしたところで、ソラはあたしの手を引っ張った。
「ちょっと待って」
あたしたちは石段の手前で、また、立ち止まった。
……風が出てきたみたいだ。
ザワザワと音を立てて周囲の木が揺れると、その音に合わせるように雲の流れも速くなる。
そして、黒い雲の間から月がその姿を表すと、辺りは白く明るくなって、目の前のソラの顔をぼんやりと照らし出した。
ソラの口元には、さっき先輩に殴られた大きなアザがあった。
「口……痛い?」
あたしが手を恐る恐る伸ばしてソラのアザに触れると、ソラはそっと目を閉じた。
ソラの頬は、唇は、とても冷たかった。
「俺は大丈夫。多分、俺より先輩の方が痛かったはずだ」
ソラはゆっくり目を開けると、あたしの手の上に自分の掌を重ねた。