ウソ★スキ
「ソラは、こんな風に俺と美夕ちゃんを2人きりにしても平気なのかな?……それとも、それだけ俺が舐められてるって言うことか……」

「そんなこと……!」

先輩は、フッと鼻で笑った。

「とにかく……俺は、ソラのこういうところが気に入らないんだよ」


先輩は体をほんの少しだけ横に向けた。

……そう。それはちょうど、視界にギリギリあたしが入るだけの角度。


「あいつは結局、キラちゃんから離れられないんだ」


先輩の視線が、ほんの一瞬だけあたしに向けられる。

だけどその後すぐに、先輩は鋭さを増した瞳で2階を睨みつけた。


「悔しいよ。俺なら、絶対、美夕ちゃんの手を離さないのに」



──嫌だ。
涙が出そうだ。


……分かってる。

『キラは夜が怖いんだ』

あたしの頭の中では、さっき聞いたばかりのソラの台詞が何度も何度も繰り返されていた。

そして、幼いキラの脅えた顔も……。


それなのに、こんな夜中に、1人でどこかへ行ってしまったキラ。


……その事情を聞いた今なら、ソラがキラを心配するのは当たり前だって、分かってあげられる。

そんなこと、分かってる……。


でも……。


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