ウソ★スキ
その言葉に、ついに先輩がキレた。

「だったら今からキラちゃんを探しに行けよ」

先輩は、荒っぽい足音をたてながら、ソファに座っているソラの目の前に移動した。

そして、ソラを見下ろしながら、

「いい加減にしろ! 黙って聞いていたら、キラ、キラ、キラって……。お前はさっきから美夕ちゃんがどんな顔をしてるか分かってるのか?」

「先輩……やめて」

「いや、もう我慢できないよ。……なあ、ソラ。そんなにキラちゃんが大事なら、さっさと駅前にでもどこにでも行けよ! そしてもう戻ってくるな! 今のお前に美夕ちゃんのことを任せられるか!」

先輩がソラの胸に電話機を押し当てる。

「ほら、早くタクシー呼んで、今すぐ出て行け!」

ソラは先輩を睨んだまま、何も言い返そうとしなかった。


「先輩、もういい! やめて──」


気づくとあたしは2人に向かって走り出していた。

そしてソラの胸を掴んでいる先輩の手を、両手で必死に押さえた。

「先輩、ありがとう。あたしは……大丈夫だから、もう……」


もう、やめて……

それは、言葉にならなかった。



──静まりかえったリビング。

あたしたちの足元で、床に投げ出された電話機のスピーカーから聞こえるツーツーという電子音だけが、いつまでも、いつまでも鳴り響いていた。




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