ウソ★スキ
ソラの部屋に入るのは、これで何度目だろう?

多分片手の指で足りる程度しか、入ったことはなかった。

そして最後に入ったのは……ソラに「キラとうまくいってないのか」って聞いて押し倒された、あの時だった。

だけどあの時は、ゆっくり部屋の様子を眺める余裕なんてなかった。

「どこでも、適当に座って」

そう言われて、あたしはベッドの縁に遠慮がちに腰を落とした。


改めて見たソラの部屋は、綺麗というより無駄なモノがない、寂しい空間だった。


本棚には教科書や問題集が綺麗に並べられていて、

それ以外の雑誌や本は、棚の隅っこに数冊積み重ねられている程度だった。

ソラはあんなによく本屋に通っているのに……この本の少なさは意外な気がした。

机の上も、携帯の充電器と閉じられたノートパソコンがあるだけ。

壁にはポスターもカレンダーも、何も貼られていなかった。


ソラの趣味って何なんだろう……?

ソラの部屋をぐるっと見回しながら、あたしは考える。

だけど、あたしはソラがいつもどんなことをして過ごしているのか、何ひとつ想像することが出来なかった。

あたし、ソラのことならだいたい分かっているつもりでいたけど、

本当は何も分かっていないんだ。

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