ウソ★スキ
「美夕、緊張してる?」

そう言いながら、家政婦さんが運んでくれたコーヒーの入ったマグカップを渡してくれるソラ。

カップに顔を近づけると、柔らかい湯気が頬にかかってくすぐったい。


「うん、ちょっとだけ……」


慌ててコーヒーに口をつけると、コーヒーはまだ熱くて舌をやけどしそうになった。

そんなあたしの様子を見ていて、ソラは「変なの」ってクスリと笑った。



……それから、あたしたちの間に会話はなかった。

ソラも、あたしの隣に座って、一緒にコーヒーを飲むだけで。

黙ったまま、ただ、時間だけが過ぎていった。


本当はいろんなことを話したいのに、あたしの意識はほとんど隣の部屋のキラに集中していた。

隣にキラがいると思うと、言葉がでなくて。身動きができなくて。



マグカップをぎゅっと握りしめると、

「……っ」

何故かマグカップの中に、涙が一滴零れ落ちた。



あれ……。

あたし、なんで泣いてるんだろう。


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