ウソ★スキ
「どうした?」

あたしの涙に気付いたソラが、あたしの顔を覗き込む。

「ううん、何でもない」

慌てて掌で涙をぬぐいながらあたしが笑うと、

「無理するなって言ったじゃん。俺ってそんなに頼りない?」


隣に座っていたソラは、あたしの手からマグカップを抜き取って、自分の分とあわせて机の上に置いた。

そして、あたしの目の前にしゃがみこんで、まっすぐにあたしを見つめた。

「美夕は悪くない。だから普通にしてればいいから」

ソラの手がゆっくりと、膝の上でぎゅっと握りしめていたあたしの手に延びたけれど、

「ごめん……っ」

あたしはとっさにその手を背中に隠してしまった。



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