ウソ★スキ
その時。

バタンと、

隣の部屋のドアが閉まる音がした。


続いて、ゆっくりとこちらへ向かってくる小さな足音。



(──キラ?)

ソラを見ると、ソラも息を殺してその物音に耳を傾けていて。

あたしと目が合うと、ソラは静かにゆっくり頷いた。


そして次の瞬間。

「ソラ、ちょっといい?」

部屋の入り口から聞こえてきたそれは、紛れもないキラの声だった。



あたしは慌てて頬を伝う涙をぬぐって姿勢を正した。



「ねぇ、ソラ。話があるの。私の部屋に来て?」

キラの声にいつもの張りはなかった。

だけどその語尾からは、しっかりと、ソラに甘えようとする“女”を感じる……。


「ここまで来たんだったら入って来いよ。鍵はかかってないから」

「私はソラだけに話があるの!」


ドア越しでもすっと通るキラの甲高い声が響くと、ピンと張り詰めた空気が辺りを支配した。


「美夕の顔なんて見たくないし、口も聞きたくない。だからお願い。ソラが私のところに来て?」

そして延々と、コンコン、コンコンってドアをノックする軽い音が続く。


「ねえソラ、早く……」


だけどソラは、

「ごめんキラ、俺、今は美夕と大事な話をしてるから。俺だけに話があるんだったら、後にしてくれ」

あたしの目をまっすぐに見つめたまま、キラにそう答えた。

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