ウソ★スキ
目の前で停まったバスの扉が開くと、

「よし、行くか!」

そう言って、ソラはあたしに先にバスに乗るよう促した。

「うん……!」

あたしはソラに笑顔を返すと、バスのステップを足早に駆け上がり、新しいあたしの“定位置”まで一気に足を進めた。

今日はもう、立ち止まらなかった。


あたしの後ろから、ソラがクスリと笑う声が聞こえてくる。

「やっぱり美夕は、こっちのほうがいいな」

「え?」

「香水だよ。もうこの香り、覚えたから」


そう言って、あたしの隣に並ぶソラ。

そんなあたしたちの距離は、昨日よりほんの少しだけ近かった。



そして、いつもの急カーブ。


遠心力のせいなのか、不意にソラがあたしの手をひっぱたせいなのか分からないけれど、

カーブに差し掛かってバスが大きく傾いた瞬間、あたしはソラの胸の中にいた。
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