ウソ★スキ
「ほら、やっぱりあの人……」
「やだぁ……」

それは複数の、クスクスって笑う声。

そして。

じっと息を凝らしてその会話に耳を傾けていたあたしだけれど、


「隣の女は? ……彼女?」

「ねえ、名前知らない?」

「写メ撮っとく?」


その言葉に、あたしの心臓が大きくビクリと跳ね上がった。

そしてその反動で、心臓も身体も、思考回路も、あたしのすべてが硬まってしまって。


「……イヤっ!」

気がつくと、あたしは手を伸ばして、ソラの身体を思い切り突き飛ばしてしまっていた。



突き飛ばされて数歩後ずさりしたソラの顔が、一瞬、驚きに変わる。


だけどソラは落ち着いたまま、後ろの座席にチラッと目を向けると、

「ああ……」

って納得したように頷いただけで。

すぐにその表情を、いつもの穏やかな笑みに戻した。



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