ウソ★スキ
先輩は、強い力でソラの手をつかんだんだろうか?
それとも、その言葉自体がそんなに苦痛だったんだろうか?

目の前のソラの顔が歪んだ。


「先輩、もうやめて!」

泣きそうになるあたしに、

「美夕ちゃんごめん、お願いだからこれだけは言わせて? そうじゃないと俺、ここに来た意味がないから」

先輩は優しくそう言うと、もう一度ソラの方を向き直った。

「『ごめんな』じゃ、ないだろ?」

そして更にもう一言。

「ソラ、今のお前は美夕ちゃんの恋人失格だ。この騒ぎが落ち着くまで、美夕ちゃんに関わるな」


部屋の空気が、さらに冷たく凍りつく。



「俺は美夕ちゃんが幸せになるならと思って身を引いたんだ。それなのにこのザマは何だ?」

先輩は怒っていた。

淡々とした口調で、落ち着いて話しているように聞こえても、その表情は険しくて。

ソラをキッと睨みつける目には怖さを感じるほどだった。


だから、あたしもソラも何も言い返せなくて。

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