ウソ★スキ
──その時、隣の部屋から声が聞こえてきた。
甲高く響くそれは、間違いなくキラの笑い声だった。
何よ。
キラ、可笑しそうに、楽しそうに、笑ってるじゃん……。
あたしの想いなんて全然伝わって無いじゃん……。
力を失ったあたしが手を緩めると、あたしが掴んでいたソラの腕はだらんと伸びてしまった。
……もういいや。
あたし1人で必死になって、バカみたいだ。
「……あたしがだだをこねると、ソラは幸せじゃないんだよね。ソラの幸せを考えない自己中なあたしなんて、ソラに嫌われちゃうんだよね?」
「美夕!」
「あたし、先輩と帰る」
これ以上ソラの部屋にいたくなくて、あたしは黙って部屋を出た。
キラの部屋の前を通ると、まだキラの笑い声は続いていて。
「何いつまでも笑ってんのよ!!」
あたしは思い切りキラの部屋のドアを蹴とばした。
だけどドアはびくともしなくて、ただ、自分の足が痛いだけで。
「あたし、キラが何したって負けないから! 絶対ソラと別れないからね!!」
そう言うと、扉の向こうからキラの笑い声も気配も、全て消えてしまった。