ウソ★スキ


──その時、隣の部屋から声が聞こえてきた。


甲高く響くそれは、間違いなくキラの笑い声だった。


何よ。
キラ、可笑しそうに、楽しそうに、笑ってるじゃん……。

あたしの想いなんて全然伝わって無いじゃん……。


力を失ったあたしが手を緩めると、あたしが掴んでいたソラの腕はだらんと伸びてしまった。


……もういいや。
あたし1人で必死になって、バカみたいだ。


「……あたしがだだをこねると、ソラは幸せじゃないんだよね。ソラの幸せを考えない自己中なあたしなんて、ソラに嫌われちゃうんだよね?」

「美夕!」

「あたし、先輩と帰る」


これ以上ソラの部屋にいたくなくて、あたしは黙って部屋を出た。

キラの部屋の前を通ると、まだキラの笑い声は続いていて。


「何いつまでも笑ってんのよ!!」


あたしは思い切りキラの部屋のドアを蹴とばした。

だけどドアはびくともしなくて、ただ、自分の足が痛いだけで。


「あたし、キラが何したって負けないから! 絶対ソラと別れないからね!!」


そう言うと、扉の向こうからキラの笑い声も気配も、全て消えてしまった。



< 503 / 667 >

この作品をシェア

pagetop