ウソ★スキ
ソラとの待ち合わせ場所は駅前だった。

『夕方、旦那さんが買い物に出ている間なら、奥さんの目を盗んで家を抜け出せると思うから。どこへ行くかは町を出てからゆっくり考えよう』

それは昨日交わしたソラとの約束。

だけど、これからどこへ行くかも決まっていないって言うのに、あたしはちっとも不安じゃなかった。

……だって、これからはずっと、ソラが一緒なんだから。

あと少しで、ソラに会えるんだから。


そう思うと、自ずと早足になっていった。



その時。

背後からバイクのエンジン音が近付いてきたかと思ったら、見覚えのあるバイクがあたしの目の前に現れて。

「美夕ちゃん!」

バイクに乗っていたのは、先輩だった。


先輩のバイクに進路を塞がれて、あたしは立ち止まるしかなかった。


先輩は、エンジンをかけたままバイクを下りると、

「学校休んだって聞いたから、心配になって来てみたんだ……」

そう言いながら、あたしの手元のカバンに視線を落とした。


「……美夕ちゃん、どこに行くつもりなの?」

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