ウソ★スキ
「先輩には、後でちゃんと礼を言おうな」

「うん……」


自動改札機にそっと差し出した切符は、まるで奪い取られるように、勢いよく機械の中に吸い込まれていった。

……と思ったら、次の瞬間にはもう、1メートル先の吐き出し口から再びその姿を現していて。

まるで「早く進め!」って急かされているような気がして、あたしは足早にそこを通り抜けた。


あたしが通り抜けた途端、「ガチャン」っていう冷たい機械音とともにゲートが再び塞がれる。


その音に、あたしは立ち止まって後ろを振り返った。


──もうあっちには戻れないんだって思ったら、

あたしに別れを告げて去っていく先輩の背中を思い出して、

そしてその先には、何故かママの顔まで見えて、


目頭がツンと熱くなった。



「美夕、行こう」

ソラは自分のバッグを肩からたすきがけにすると、空いた片方の手であたしのカバンを持ってくれた。

そしてもう一方の手で、あたしの手をしっかり握ってくれて。


「……うん」

あたしはソラの手をぎゅっと握り返した。
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