ウソ★スキ
「何笑ってるの?」

振り返ると、背後にはいつの間にかトイレから出てきた先輩がいた。


「先輩、結婚するんだ」

「……分かった?」


お酒のせいなのか、それとも照れているせいなのか。

「ふぅ」ってソファに深く座る先輩の顔は真っ赤だった。


「……今日プロポーズしてきたんだ。そのことを美夕ちゃんに一番に伝えたくてね」


だけどちょっと飲み過ぎたよなぁって、先輩は笑った。

どうやら彼女を家に送った後もまた、別の居酒屋に立ち寄って、1人で飲み直してからうちに来たらしい。


「……そんなに意気込んで来なくてもいいのに」

「それくらいの勢いが欲しかったんだよ」




──先輩との『恋人のフリ』は、あれから3年続いた。

当時のあたしたちの関係を『恋人のフリ』というのか『恋人』というべきなのか、

それは今でもよく分からない。


ただ、あたしはずっとソラへの気持ちを引きずっていて、

先輩は「それでもいい」って、そんなあたしを全て受け入れてくれて。



だけど、そんな関係に終わりを告げたのは、先輩からだった。





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