ウソ★スキ
「美夕ちゃんは、俺といるといつまでもあの双子のことを忘れられないね」

泣きじゃくるあたしの、シャツのボタンを留めながら。

「でも、それじゃいけない。悔しいけど、美夕ちゃんを幸せにできるのは俺じゃなくて、ソラを知らない奴なんだ。……もしくは、ソラ本人か……ね」


一番下のボタンまで留め終えると、先輩は

「よし、終わった」

って優しくあたしの頭を撫でてくれて。


「本当はずっと前から分かってた事なんだ。もっと早く言ってあげるべきだったのに……俺が女々しくて、なかなか美夕ちゃんを解放してあげられなくて、ごめんね」

「……ううん」




そんなことない。

あたしだって。

5年前のあの出来事を全部知ってくれている先輩といるのが、すごく楽で。

そんな先輩に、ずっとずっと甘えていただけなのに……。



先輩の最後の言葉は「ありがとう」だった。




その日を境に、3年続いた先輩とあたしの『恋人のフリ』は終わった。


確かに普通の恋人のような甘い関係ではなかったし、

お互い納得しての別れだったけれど、


それでも嫌いで別れたわけではなかったから、辛かった。



< 569 / 667 >

この作品をシェア

pagetop