ウソ★スキ
だけど、苑ちゃんはそんな挫折を見事に乗り越えた。

人一倍ピアノの練習をして、音楽の勉強をして。

そうして高校を優秀な成績で卒業した後、大学在学中に海外の音楽大学に留学して。

そこで1人の先生に薦められて参加した、地元の小さな、だけど由緒あるコンクールに見事入賞した。


だからといって、すぐにピアニストへの道が開けたっていう訳ではないらしいけど、地元の教授に気に入られて、1年間の予定だったはずの海外留学が、気付けばもう2年以上。

まだまだ当分、あちら暮らしが続きそうだという。



「凱旋公演って、苑ちゃん、すごい……」

「うん。我が妹ながら立派だと思うよ」


そして先輩は笑って言う。

耳にタコができるくらい聞かされた言葉を、また今日も。


「きょうだいって不思議だよ。苑なんて、クソまじめで融通が利かなくて、赤の他人だったら絶対敬遠するようなタイプなのに」

苑ちゃんのことを語る先輩は、いつだって目尻が下がって、幸せそうだ。

「だけど、そんな苑がかわいくて仕方ないんだよなぁ。俺の妹なんだって思ったら、どんな苑だって、自然に受け入れられるんだ」


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