ウソ★スキ
気がつくと、先輩は気持ちよさそうに寝息をたて始めていて。

あたしは慌てて涙を拭うと先輩の体を軽く揺さぶった。

「先輩、寝ないで! 肝心なこと、まだ聞いていませんよー!」

「え……と。何だっけ?」

「もう……先輩は今日ここに何の報告をしに来たんですか? 先輩のプロポーズの相手、どんな人か教えて下さい」


いつの間にか話が逸れていたけれど。

本当に聞きたかったのは、先輩の幸せな報告。


「……美夕ちゃんと同い年だよ。ひとつ年下のくせに、すごく偉そうなんだ」

先輩は目を閉じたまま、何を思い出しているのかクスクス笑っていた。

「どう思う? 俺のこと、『徹って子供だね』ってガキ扱いするんだよ」

「……先輩を? ガキって?」

「うん、ヒドイよね」


驚いた。

こんなに穏やかで大人な先輩のことを、そんな風に言える人がいるなんて。



「……彼女と付き合い始めたのは、2年前の春先だったかな。ちょうど俺が美夕ちゃんを諦めた頃だよ。彼女とは以前から大学のサークルで一緒だったんだけど、当時彼女も失恋したばかりでね……」

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