ウソ★スキ
あたしの申し出がよっぽど嬉しかったのか、先輩はどんどん早口になって説明を続ける。

「そうか……出来るだけ早いほうが助かるんだけど……美夕ちゃん今から行ってもらっても大丈夫なの?」

「いいですよ」

「ありがとう! もしまだ事務所が開いていなければ……そうだな、1階にレストランがあるから。そこに行ってくれるかな? あそこだったら朝早くても厨房に誰かいるはずだから。店員さんに声かけて、書類を渡しておいてもらえる?」

「はい」

「助かるよ。……っと、そろそろ電車乗り換えるから、いったん電話切るね。またあとで連絡するから」

「……はい」

「宜しく!」

先輩は言いたいことを一方的に言うと、あっさり電話を切ってしまった。



……人にこんな大切なモノを届けさせるなんて、信じられない。


先輩ってば、まだお酒が残ってるんじゃないの?

……または、幸せすぎて冷静な判断ができないか。


そのどちらかに決まってる。



時計を見ると、8時をちょっと過ぎたところだった。

「どう考えても、こんなの絶対ありえないでしょ」

あたしはブツブツ文句を言いながらも、大急ぎで出かける準備を始めた。



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