ウソ★スキ


……もっと大きなバッグを持ってくれば良かった。

そう。
この幸せオーラ漂う青い封筒がすっぽり隠れてしまうような、大きなバッグを。



それから1時間後、あたしは結婚式場の前にひとり佇んでいた。

朝の駅前は人の通行が絶えず、行き交う車の音も騒々しい。

それなのに、四方を白い壁に囲まれたその一角だけは、人の気配もなくひっそりと静まりかえっていて、完全に周囲の喧騒とは一線を画していた。

あたしよりも背の高い白壁の向こうに目をやると、式場のシンボルとも言える鐘付きの時計台が顔を覗かせている。

時計は、ちょうど9時を指していた。


……こんな朝っぱらから、胸元に大事そうに結婚式場の封筒を抱えてチャペルを眺める女なんて。

他人にはきっと幸せボケした「未来の花嫁」に見えているんだろうな……。


通行人が後ろを通り過ぎるたびに、あたしは何故か恥ずかしくなって下を向いた。

だったら早く中に入ればいいのに。

だけど、意識しすぎなのは分かっていても、自分にとって全く縁のない結婚式場というのはかなり抵抗のある場所で。

……独り身にとって、こんな辛い場所はない。

あたしは重い足取りで、結婚式場へと足を踏み入れていった。


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