ウソ★スキ
「キラのパパ、ひどいね……」

笑っちゃいけないんだけど。

でも、キラがクスクス笑いながら語るから、あたしまでつられて笑ってしまう。

「その後はもう、夜明け前の空に向かってひたすら神頼みだったらしいよ。……でも、空に祈っていたら、突然この星が光ったって言うの。小さいけど力強く瞬く星がふたつ。それを見て、パパはあたしたちもママも絶対大丈夫だ! って確信したらしくて、大慌てでこの写真を撮ってママのところに戻ったんだって」


薄暗い空にしっかりと輝く、希望の星。

……毎日のようにキラの家に通っていた頃、あたしはいつもこの写真を見ていた。

あたしたちが小さな頃から、ずっと、ずっと。

キラの家の玄関にはこの写真が飾られてあったんだ──


「……そんな事情があったなんて、全然知らなかった」

「私も最近知ったのよ。しかもこれ、どこのお店にも飾ってるんだって! なんか親バカっぽくて恥ずかしいよね」

だけどそんなことを言いながらも、キラはすごく嬉しそうだった。


「ところで美夕。先輩と結婚するんだ?」

「……え?」

「だって、その青い封筒。式場の申し込みでしょ?」

「これは……」

とっさに封筒を背中に隠してしまう。

そんなあたしを見て、キラは「何を今更」って笑った。


「……お客さんの中に先輩にすごくよく似た人がいるなぁって、前から気になってはいたんだよね。でも、昨日初めて女の人と一緒に来てたんだけど、相手はなんとなく美夕とは雰囲気が違ったんだ。先輩の背中をバン! って叩いたりして、先輩もタジタジって感じで……だから、まさかあれが美夕だとは思わなかったんだけどな」

「……」

何でだろう。

『違うよ』って、一言否定すればいいのに。


「あれはやっぱり美夕だったんだね。あれから……先輩とずっと続いてたんだ?」


──あたしは何故か、何も言えなかった。


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