ウソ★スキ
『あれから』っていうキラの一言に、あたしの胸はぎゅっと締め付けられた。


「美夕は幸せだったんだ。私がこんなことを言うのはおかしいかも知れないけど……良かったね」


一度言うタイミングを逃してしまうと、なかなか次のチャンスは巡ってこない。


あたしがこの5年間『幸せだった』なんて……。

そんなこと……。


あたしは返事を誤魔化そうと話題を変えた。


「そういうキラは? 元気でやってたの?」

「見ての通りよ」

そういうとキラは静かな店内をぐるっと見回した。

「親の店で、毎日こうしてこき使われてる」

「……もしかして、ここの店長なの?」

「まさか! まだまだ下働きの身だよ」

「……そう」


キラの話を聞きながら、あたしは自分の心臓の音がどんどん大きく、早くなっていくのに気がついていた。

あまりにもその心音が大きすぎて、キラに聞こえちゃうんじゃないかってくらい。

その言葉を思い浮かべただけで、あたしの耳はかあっと赤くなっていった。


……聞きたい。

一言、聞きたいのに。

だけどそれは喉の奥にぐっと詰まったまま、決して言葉にならなくて。



「そうか。美夕と先輩が、結婚ね……。私たちも遂に結婚の話が出るような年頃になっちゃったんだ……」


申し訳ないけれど、キラの話はほとんど頭に入ってこなかった。



それよりも。

どうしても、

……聞かないと。


あたしは意を決して、その言葉を口に出した。


「ねえ、キラ。……ソラは、元気?」


極力自然な感じで言ったつもりだったのに。

その声は、情けなくなるくらい震えていた。

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