ウソ★スキ
だけど、キラはなかなか返事をしてくれなかった。

表情を全く変えないまま、
あたしに横顔を向けたまま。

あまりにもキラが無反応だったから、もしかすると聞こえなかったのかも知れないと思って、

あたしはもう一度

「ソラは……元気?」

そう尋ねなければいけなかった。



キラは一番手前のテーブルに進むと、上にのせられていた椅子を下ろしてゆっくりとそれに腰掛けた。


「知らない」


──キラはあたしに背中を向けていたから、どんな表情でそう言ったのかは分からない。


だけど、その声はなんだか辛そうで。

そしてとても苦しそうだった。



「私も知らないのよ。今、ソラが元気なのか、どこにいるのか。何も──」

「……え?」

「……美夕も噂を聞いたでしょ? 5年前のあの日、私たちは救急車で病院に運ばれたの。そして翌日病院のベッドで目が覚めたとき、私のそばにはもう、ソラはいなかった……」

「病院って……一体何があったの?」



キラのふぅーって重く長い溜息が、静まりかえった店内にやけに響く。


キラは背中越しに顔だけをこっちに向けると、言った。


「聞きたい? あの日、あれから何があったのか」


その横顔は、さっきまでの無表情とは違い、苦痛に歪んでいた。
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