ウソ★スキ
「ソラは絶望してた」

キラはあたしの返事を待たずに、話を続けた。

「あとから聞いたんだけど、美夕もホームにいたんだってね。私、全然気がつかなかったよ」

「あのとき、キラにはソラしか見えてなかったから……」


キラが黙って頷いた。


「でもね。私だって決して『まとも』じゃなかったけど、ソラの方がやばかったのよ。電車に乗った後、ソラはずーっと放心状態で。私が何を言っても返事ひとつしてくれなかった」


その時の2人の姿を思い浮かべると、涙が溢れた。

どんなに濡れた頬を手で拭っても、拭っても、あたしの涙は止まらなかった。


「……私のせいだって分かっていても、そんなソラを見ているのは辛かったな」


何も会話の無いまま、ただソラに寄り添って、揺られる電車に身を任せて。

キラたちは、全然見たことも聞いたこともない終着駅に着いてしまった。


「だけどそこは私たち以外に降りる人もいないようなど田舎だったの。ホテルどころか、駅前にはコンビニすら見あたらなくて。あのときはホントに参ったな……。ソラと一緒なら別に公園で野宿したって構わなかったけど……でも」


……本当は、泣きたかったよ。

当時を思い出したのか、キラの声は涙混じりだった。


「だけど駅の周辺地図を見ていて気付いたの。ここからあのペンションまで、そう遠くないって。……それに気付いたとき、『助かった』って思った。……それから、私たちはタクシーを拾ってペンションに向かって、窓ガラスを割って中に入ったの」




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