ウソ★スキ
そしてその夜、疲れ切っていた2人はすぐに寝ることにした。

……といっても、それはキラが一方的に決めたことらしいんだけど。


2階の客室──旅行をしたときに2人が使った一番手前の部屋──に上がると、2人は倒れるようにベッドに横になった。

「もちろん、別々のベッドで、ね」

あたしを横目で見ながら、キラはそう付け加えた。


「……だけど、ソラはなかなか眠れなかったの。私は疲れていたし、ソラがそばにいるって思ったら安心できてすぐにウトウト始めたんだ……。でもね、ふと目を覚ますと、ソラは起き上がって、頭を抱えていて……」

「ソラが眠れないって、そんなに珍しいことなの?」

「うん。あんなソラを見たのは初めて。すごく辛そうだった。……だから私、薬を1粒だけ、ソラに渡したの」

キラが持っていたのは、1シートに10錠入った睡眠導入剤。

両親が不眠で時々服用していたその薬を、キラはこっそり寝室から盗んで隠し持っていたらしい。


「他意はなかったのよ。ソラはホントに辛そうで……。だから、よく眠れると思って、ただそれだけのつもりで。……美夕は、信じてくれるよね?」


まっすぐにあたしを見つめるキラの潤んだ目は、決して嘘なんてついていない。

あたしは無言で、大きくひとつ頷いた。

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