ウソ★スキ
「目が覚めて、隣にソラがいないことに気付いたときには発狂するかと思ったよ。『ソラに会わせて!』って意識を失うまで泣き叫んで、病室から逃げ出そうとして倒れて……」

最後の力を振り絞るように話を続けるキラ。

「私は体も弱ってたけど、それよりも心のケアが必要だったんだよね。それからすぐに転院させられたの。……入院っていうより、あれは監視付きの軟禁だね」

お店の高い天井を見上げるその瞳は、涙で潤んでいた。


「……ソラは?」

「転院前に一度ソラを担当するお医者さんが私の所に来て、その晩なにがあったのか聞かれたことがあったの。その時に少しだけソラの様子を教えて貰ったんだけど……ソラは目を覚ましたとき、薬を飲んだ後のことを何も覚えていなかったみたい。……それも、睡眠薬の副作用らしいんだけどね」

「あとは? どこも悪くなかったの?」 

考えたくないけど、さっきキラから聞いた『薬物中毒』と言う言葉に否が応でも悪い想像をしてしまう。

「それに、後遺症とか……」

「大丈夫よ」

そんなあたしの不安を見透かしたように、キラが笑う。

だけどその笑顔は、とても柔らかいものだった。


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