ウソ★スキ
それから、キラは「そろそろ準備しないと」って慌ただしく立ち上がった。

私たちは、次の約束もしないまま別れた。



先輩から預かった書類を渡し忘れたことに気がついたのは、レストランを出たあとだった。


式場の受付に戻ると、そこにはもう社員らしき人がいて。

その人に事情を説明して青い封筒を渡すと、

「昨日お電話でご連絡を頂いた際に、書類は週末になっても構いませんと申し上げたのですが……」

とひどく恐縮されてしまった。



式場を出るとなんだかおかしくなって、あたしは笑ってしまった。

先輩は、ここにキラがいることを知ってたんだ。


『一度きちんとキラちゃんと向き合わないと、美夕ちゃんはいつまでも前に進めないよ。今ならもう落ち着いて話し合えるんじゃない?』

あたしが問い詰めたら、きっと、先輩はそんなことを言うんだろう。



──だけど、5年ぶりの親友との再会には、喜びも感動もなく。

思い出話を語り合うどころじゃなくて、一方的に衝撃の告白を聞かされただけで。


……そして、次の約束もない。


『私やソラのことはもう忘れて、幸せになって』

最後にそう言ったキラは、あたしと再度会うことを望んでいない気がした。


それもそうだよね。

キラからソラを奪ったのはあたしなんだから。

……本当はあたしの顔なんて二度と見たくなかったのかも。



こうして、5年ぶりの親友との再会は、あまりにもあっけなく終わってしまった。


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