ウソ★スキ
「じゃあ、そろそろ仕事の時間だから、行くね」

照れ隠しをするように、キラが軽く咳払いをする。



「これからお店?」

「うん。早く戻ってランチの準備しなきゃ」

そう言うとキラは、玄関のドアに手をかけた。


「待って! 駅まで送るよ」

「子供じゃないんだから見送りなんていらないよ。それに電車じゃないの。下に車を待たせてるから」

「……車?」

「そう。運転してきたのは、両親お気に入りの、うちのお店の店長……」


キラがドアを開けると、再び玄関に眩しい日差しが入り込む。

あたしは目を細めて、今にも出て行ってしまいそうなキラの背中を見つめた。


「……兼、私の見張り役なんだ。うちの親も相変わらずおかしいことしてくれるでしょ? そいつなら堅物だから間違いは起こらないって、信用しきってるんだから」


──じゃあね、美夕。

キラはそう言うと、あたしの方を振り返ろうともせずに玄関から出て行ってしまった。


あたしは慌ててその背中を追いかけた。

「キラ、待って!」


キラを追って玄関を出ると、キラはもう階段を半分くらい降りたところで。

キラは足を止めずに、階段を下り続けながら、

「なあに?」

と、あたしを見上げた。




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