ウソ★スキ
諦める勇気
それから、あたしは数日おきに「twin star」に通うようになった。


バイトが休みの日には決まって、電車で片道2時間かけて「twin star」へ。


「twin star」のドアを開けると、そこにはいつも旦那さんと奥さん、そしてソラがいた。

大学はすでに春休みに入っていたから、ソラはお店の手伝いをしていることが多くて。


サークル活動等、たまに用事があって外出しているときでも、あたしがいる間に必ず戻って来て顔を見せてくれた。

そんなとき、ソラはいつも息を切らしながら勢いよくお店のドアを開けて。


カウンター席に座るあたしの姿を見つけると、

「あーよかった、今日も間に合った!」

そんな嬉しい言葉と、最初の日に比べてほんの少しだけ距離の縮んだ笑顔をくれた。


……ソラが帰ってくるのをずっと待っているわけだから、間に合うのは当たり前なんだけど。


でも、そんなこと、ソラは気付いてくれない。





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